昨年5月にノーベル文学賞の選考機関のスウェーデン・アカデミーで性犯罪スキャンダルなどが相次ぎ、2018年は文学賞の発表を見送ることとなりました。

文学賞だけ受賞なし」というのに違和感を感じていたのですが、突然「新ノーベル文学賞」の最終選考に村上春樹さんの名前が上がりました。ですが発表まであと3週間というところで村上さんはノミネートを辞退しました。

そして今年2019年は「2018年と2019年の受賞者が2人同時に発表される」ことになりました。

村上春樹さんといえば、これまで10年以上も「ノーベル文学賞候補」と言われ、そのたびに落選し続けたので最近では「もう無理なのでは?」とも言われていましたね。ですが、なぜ候補に上がるのか不思議にも思いませんか?

それには理由があります。

今回は

  • ノーベル文学賞の日程
  • 村上さんが新ノーベル文学賞を辞退した理由
  • 村上春樹さんが今までノーベル文学賞候補と言われた理由
  • なぜ毎年13年も落選しているのか?

などノーベル文学賞について詳しく紹介します。

ノーベル文学賞2018、2019の発表日程

ノーベル財団は今年3月、ノーベル文学賞の受賞者発表を今年は予定通り行う方針を公表しました。今年と昨年の2年分の受賞者が合わせて10月10日(木)に公表されます。

その他のノーベル賞の発表は

  • 医学生理学賞は10月7日(月)
  • 物理学賞は10月8日(火)
  • 化学賞は10月9日(水)
  • 平和賞は10月11日(金)
  • 経済学賞は10月14日(月)

となっていて、各賞の授賞式は創設者アルフレド・ノーベルの命日に当たる12月10日(火)に行われます。

昨年(2018年)新ノーベル文学賞の候補を村上春樹が辞退

毎年ノーベル文学賞はスウェーデンの本家、ノーベルアカデミーの選考委員により選ばれます。ですが、昨年はその選考委員の長年の不祥事が一昨年末に明らかになり、5月にはノーベル文学賞の発表をしないということが決まりました。

ですが選考委員の不祥事で発表ができないというのも理不尽な話で、結局スウェーデンのジャーナリストや作家で構成された「The New Academyニューアカデミー)」を設立し、そこで「新ノーベル文学賞」として対象者を選出することになりました。

そして本来ノーベル賞はどの賞も事前に候補者を発表することはないのですが、新ノーベル賞は推薦された47人の候補者の中から、スウェーデンの選考委員や世界中の人々の投票によって4人の最終候補を発表しました。

このニューアカデミーでは最初からすべてオープンになっていて、世界中から投票できる仕組みになっていました。その中になんと村上春樹さんがノミネートされたのですが、その後に辞退しています。

結局新ノーベル文学賞の受賞者はフランス海外県グアドループ出身のマリーズ・コンデ(Maryse Condé)さんになりました。

マリーズ・コンデさんの代表作品

Segu (Penguin Modern Classics)(1985年)

Crossing the Mangrove(1989年)

Desirada(1997年)

Who Slashed Celanire’s Throat?: A Fantastical Tale(2000年)

受賞式が本家のノーベル賞と同じ12月9日に開催されて、この受賞式の翌日にこのニューアカデミーは解散となり、2019年に本家のスウェーデンノーベル文学賞にて2年分の受賞者が発表されることになりました。

村上春樹が新ノーベル賞を辞退した理由

今度こそは受賞するかもと思っていたのですが、村上さんは最終選考のノミネートを突然辞退しました。賞の選考組織「ニュー・アカデミー」のウェブサイトでは、

村上さんは、最終候補に選ばれたことに感謝の思いを示しながらも、執筆活動に専念したいとして辞退する意向を伝えてきた

と発表しています。

ノーベル文学賞は辞退したことないのに、新ノーベル文学賞はなぜ辞退するの?」と思うかもしれません。ですが、ノーベル賞新ノーベル文学賞のように、最終選考に残った人を前もって発表はしません。発表するのは50年後です。

となると最終選考にも残っていない可能性もあるのに、「辞退します!」というのはおかしいですよね。

ここで考えられるのは、もちろん執筆活動に専念したいというのは表向きの理由で本当はノーベル文学賞には興味があるが、1年限定の新しい賞には興味が無いこれが本音ではないでしょうか?

新ノーベル文学賞がノーベル文学賞と同等の価値、またはそれ以上、もしくはそれ以下なのか現時点ではよくわかりません。

それならば「新ノーベル文学賞は辞退して、翌年以降のノーベル文学賞に期待する。」と村上さんが思ってもおかしくありません。

新ノーベル文学賞を受賞するとノーベル文学賞は受賞されないとは発表されていませんが、おそらくダブル受賞はできない可能性が高いです。

また昨年、ノーベル文学賞の発表はありませんでしたが、公表しないだけで選考はあります。それが今年発表されます。

一番かっこいいのは、今年ノーベル文学賞を受賞したのに、「執筆活動に専念したいので受賞は辞退します」ですね。

これだったら、私の「新ノーベル文学賞には興味が無い」という説は間違いで、ノーベル文学賞も新ノーベル文学賞どちらも興味が無かったということになります。

ただ今年受賞したら、おそらく辞退はしないと思います。

なぜ村上春樹氏がノーベル文学賞候補と言われるのか?

村上春樹がノーベル賞にふさわしくない!」と主張する人も多いですが、候補に上がるのはそれなりの理由があります。その理由は2つあり、ひとつは「国際的な文学賞を受賞しているからです。

村上春樹さんが2006年からノーベル文学賞候補に挙がっていますが、昨年の新ノーベル文学賞の候補者のノミネートされた際に作品名も紹介されています。

村上春樹さんの代表作品

ノルウェイの森 (1987年)

ねじまき鳥クロニクル (1995年)

海辺のカフカ (2002年)

1Q84 1-3巻セット(2010年)

村上春樹の国際的な文学賞の受賞歴

まず、村上春樹さんは2002年に少年を主人公にした長編小説の「海辺のカフカ」を発表しました。そして2005年に「海辺のカフカ」の英語版「Kafka on the Shore」がニューヨークタイムズの「The Ten Best of 2005」に選ばれて国際的に評価が高まりました。

2006年には

  • フランツ・カフカ賞
  • フランク・オコナー国際短編賞

といった国際的な文学賞を続けて受賞しています。

特にフランツ・カフカ賞は、

  • 2004年の受賞者エルフリーデ・イェリネク氏
  • 2005年の受賞者ハロルド・ピンター氏

この2人がいずれもその年のノーベル文学賞を受賞したということもあり、「2006年度のノーベル文学賞の有力候補は村上春樹氏では?」と話題になりました。

それ以降毎年今年こそ村上春樹さんが受賞するのではないかと言われ続けているわけです。

海外人気がスゴイ!ブックメーカーで毎年上位

そしてもうひとつの文学賞の候補の理由は「海外人気がスゴイ」ことです。まずスポーツなどの勝敗を賭けてお金をもらう、イギリスのブックメーカーの予想では毎年ノーベル文学賞の受賞予想の上位に村上さんが上位にランキングされています。

ここ4年間のブックメーカーのオッズで村上さんは

  • 2014年:1番人気
  • 2015年:2番人気
  • 2016年:2番人気(途中までは1番人気)
  • 2017年:2番人気(途中までは1番人気)

ケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴ氏が1番人気になりました。

ですが2016年の文学賞受賞者は音楽家のボブ・ディランさんで、2017年はカズオ・イシグロさんでしたね。となると、「ブックメーカーなんて一般人が好き勝手に賭けているだけでしょう?」と思うかもしれません。

ですが、3年前の1番人気はベラルーシの女性作家スベトラーナ・アレクシエービッチさんで、そのままノーベル文学賞を受賞していますので、全く当たらないというわけではありません。

これだけ村上春樹氏さんがブックメーカーで1位、2位となるのはそれなりに海外人気があるからです。また、村上さんの人気は最近、日本よりも海外の方が上回っていると言われています。

海外のサイン会でも前日から並んでいるファンがいるほどの人気があるのも後押ししています。

昨年、新ノーベル文学賞の最終候補に残ったのも海外のファンが多く投票しないと選ばれなかったわけですから、かなりの人気があるわけです。では、なぜ毎年受賞するのではと期待されながら結局選ばれないのはどうしてなのでしょうか?

村上春樹さんがノーベル文学賞を逃し続けている訳は?

村上春樹さんがノーベル文学賞を逃している理由はいろいろと言われていますが、これといった決めてはありません。

①政治的や社会的問題を取り扱わない

日本人のノーベル文学賞受賞者には川端康成さんや大江健三郎さんがいます。大江健三郎さんの作品では政治的・社会的問題が扱われていますが、村上さんの作品はそういう要素が見られないと指摘されることもあります。

これは村上さんの作品が強力なテーマや目的が欠けているとみられていて、これがノーベル賞を未だに受賞できない理由のひとつとも言われています。

②芸術性が低い

村上さんは大衆作家で文芸作品に比べて芸術性も低いと指摘される方もいます。ですが芸術性がある、ないを評価するのは難しく、国際的に有名な賞をもらっているのに全く芸術性がないとは言えないという意見もあります。

➂「日本ペンクラブ」に所属していない

ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎さんや川畑康成さんは「日本ペンクラブ」というところに所属していましたがこれに村上さんが入っていません。つまり作品だけでなく、ロビー活動が必要と言っている方もいます。

[su_box title=”日本ペンクラブとは?” style=”bubbles” box_color=”#3944f9″ title_color=”#fdfdfd”] 日本ペンクラブは、ロンドンに本部をもつ国際ペンの日本センターとして1935年11月26日に創立。 日本ペンクラブは、その創立と歴史が示すように、平和を希求し、表現の自由に対するあらゆる形の弾圧に反対するとの精神に賛同するP(詩人、俳人、劇作家)、E(エッセイスト、エディター)、N(作家)が集まり、独立自尊をモットーに活動をし続け、日本の言論界をリードしてきました。[/su_box]

ただし、大江健三郎さんは1970年にはペンクラブを脱会していて、ノーベル文学賞を受賞したのが1994年ですから、これも違う感じがします。

④作品が通俗小説

村上さんの小説は純文学ではなく、通俗小説(エンタメ作品)だからだという人も多いです。

ノーベル賞委員会は通俗小説を嫌うと言われていますが、「村上氏の作品も通俗小説と評価されているのではないか?」と指摘する人もいます。

まあこれは選考委員の人たちがどう判断しているのかというところもありますが、新ノーベル文学賞で最終候補に選ばれているということは、通俗小説とは違うという評価をしている人が多いのではないでしょうか?

いずれにせよ、このような理由で選ばれてにいないのか、候補には上がっているけど、たまたまなのかは今のところはわかりません。

そもそも毎年村上さんが最有力候補とかオッズで一番人気といっても、ノーベル賞の選考委員会は候補を公表しているわけではありません。

もしかすると毎年候補に挙がっているかもしれないのですが、全く候補にも挙がっていない、もしくは数回は候補に挙がっていたということも考えられます。

これは後30数年するとわかります。先ほども紹介しましたが、

ノーベル賞委員会は50年経つと候補を公開する」ことになっています。

このことにより

  • 1963年の文学賞最終候補に三島由紀夫さんが選ばれ、一歩手前でもれていた
  • 当時の日本では全くノーマークだった賀川豊彦さんが、実は1947年の文学賞の候補だった
  • 吉田茂元首相が65年の選考で平和賞の最終候補に残っていた

このような情報が50年を経て初めてわかったりしています。

つまり2006年から村上さんノーベル文学賞候補と言われていましたが、実際に候補だったのかは2056年にならないとわからないのです。

とはいっても新ノーベル文学賞の最終候補には選ばれたということは、ノーベル文学賞でも今まで候補には挙がっていた可能性は高いです。

まとめ

ノーベル文学賞を受賞するのではないか?と毎年言われ続けて今年で14年目の村上春樹さんですが、今年は本家のノーベル賞文学賞で2年分の受賞者を発表するということが決まっています。

2018年か2019年のどちらかに村上さんの名前があるかもしれません。「14度目の正直」を期待しましょう。